年金あれこれ(3)ー年金問題とIT
年金について、また別の観点で書きます。
先日の「朝まで生テレビ」でも出た話ですが、年金を管理するコンピュータシステムはどうなっているのか、という話です。
ぼくは仕事でITソリューションの取材をよくやるので、この話は少し知っていることがあります。そんな知識を交えながら、書いてみます。
年金のITシステムは、メインフレームと呼ばれる巨大なコンピュータの上をCOBOLと呼ばれる原始的な言語で書かれたプログラムが走るという、いわゆるレガシーシステムです。
この形のシステムは、現在主流のオープンプラットフォームのITシステム、すなわちUNIXやWindowsによって動くPCベースのネットワークシステムよりかなり古いものです。
特に90年代には、こうしたメインフレームシステムが流行し、2000年前後から、オープンシステムへの移行が盛んになりました。こうしたメインフレーム→オープンへの移行はレガシーマイグレーションと呼ばれ、ITベンダー企業の主力ソリューションサービスの一つになっています。
年金システムも例外ではなく、いつ頃からかは知りませんが、少しずつメインフレームをPCに置き換える作業を進めてきたと、自民党の片山さつき氏がこないだの「朝まで生テレビ」で言っていました。このとき番組内では、「新しい年金システムを開発するのに○○ヶ月かかる」という言い方が乱発され、完全に混同して論じている人もいれば、意識的にすり替えている人もいました。ちょっとその整理をしたいと思う。
まず、社会保険庁の職員に「新しいシステムはいつできるんだ?」と聞いたら、「いつになるかわからない」と答えた、という話が出ていましたが、これは、まさに上述のレガシーマイグレーションの話です。大体1000人規模の企業のマイグレーションでも、最低1年から1年半はかかる話なんで、より大規模で古く、複雑な年金システムではもっと長くなるでしょう。当たり前です。こういう複雑なシステムの場合は、一気にメインフレームからPCに置き換えるということは難しい。したがって、○ヵ年計画、として、少しずつ置き換えている、という片山氏の話には信憑性がある。これはこれでよいと思う。
一方、データ統合するためのソフト開発するのに4ヶ月、といっていましたが、これはマイグレーションとは別の話。なので、上記の社会保険庁の職員の発言「いつになるかわからない」というエピソードを持って、「4ヶ月はうそでしょ」という批判は成立しません(番組内でそういう批判があったかどうか忘れましたが)。混同してはならんのですが、このプログラムとは、おそらく「氏名が同じ漢字かつ生年月日が同じ、という条件を満たした複数のデータがあったら、それを一つに統合し、支払額を合計して算出する」といった類のプログラムがしこんだソフトのことでしょう。条件設定はどうするのか、詳細はわかりませんが、疑わしいデータがあれば、マーキングしてあとで手動で調べる、といった機能もつけるんでしょう。
ちょっと問題なのは、この「データ統合ソフト」が、どういうシステムの上で動くのか、ということです。
それは、現在のメインフレームとPCが混在したシステム、すなわち、メインフレーム専用のOSやらCOBOLやらとWindows(UNIXかも)が混在したプログラムの上で動くソフトということです(片山氏が言っていた)。ずいぶん複雑なもんを作るわけですね。とても4ヶ月で開発できるとは思えない。
もちろん、レガシーマイグレーションが完了して、すべてPCベースに置き換わったあとに、こうした「データ統合プログラム」を構築したほうが、ずっと楽だし、開発期間も短いのでは?と思いますね。予算も間違いなく少なく済む。まあしかし、「いつになるかわからない」というマイグレーションを待っているわけにもいかない・・・・のか?
大体、現状どういうシステムであるかは把握してるはずだし、どんなに複雑だろうとも、マイグレーションの期間だってきちんと算出できるはずです。「いつになるかわからない」わけがない。個人的には、インドオフショアを活用したインド系外資企業にやらせれば、一番早いし、安く済むのではないかと思う。NTTデータで大丈夫なんでしょうか。
やっぱり、「1年以内に解決しないといけない」というのが先に決まっていて出てきた方策だと思う。1年というのは、政治的な観点・議論から算出された値でしかない、ということでしょう。「1年でできるという根拠を示せ」という野党の批判はもっともです。
さて、もう一つ腑に落ちなかったのが、与党が、全国民の年金記録を「来年4月に送る」、といっている、もしくは言いかけている、点です。
それに対して、野党議員が「今すぐ送れ」と。
それが「送ろうにも送れないんだ」と、公明党議員の反論。
「新しいシステムができていないのに、どうやって送るんだ?」と反論していましたね。
これは、意図的なすり替えだと思う。
番組内でもある女性ジャーナリストが言ってましたが、今でも社会保険庁にいけば、不完全ながら「あなたの年金記録はこうなっています」という書類を印刷して渡してくれるわけです。それをたたんで今すぐ送れという話にすぎない。
誰もいまさら、きちんと統合された正確なデータを送ってほしいなんて思っていない。
「自分のがどうなっているのか、確認したい」と思っているわけで、不祥事を起こした社会保険庁には、その要望にこたえる義務があるでしょう。はがき代に税金が使われるのだから慎重にしないといけない、とか言っていたが、それこそ社会保険庁の職員の給料から出せばいい。確認しにわざわざ社会保険庁に行くには、交通費もかかるし仕事も休まないといかん。何でそんな負担を国民が背負わなくてはならんのか?
求めているデータの意味が違う。データ統合ソフトもマイグレーションも待つ必要なんてないのです。そんなこともわからんのか、と思いましたね。「不安な人は、そっちのほうから出向いてね。ちゃんと教えてあげるから」という高飛車な態度がいかん、といってるのです。
ともかく、年金システムはコンピュータシステムも含めぼろぼろなわけですね。
4ヵ月後に完成するという「データ統合ソフト」にしても、ほんとにまともに動くのか?と思いますし、きちんとデータ統合ができるとも思えません。作業がちょっと楽になる、程度でしょう。統合結果が妥当だと、どうやってテスティングするんだろう?
そもそも、旧システムにも入っておらず、宙に浮いたどころか、消えた年金もある。
統合とか、移行とか、の次元ではなく、データとして存在しないものが多数あるそうで。
1年たっても、さらに混乱したままではないか、と思います。
年金制度、崩壊へまっしぐら、ですね。
| 固定リンク







コメント